「遊〜そぼッ!」 (PD-38)

僕と女房が団地の裏道を通って友達のHTさんの所に行く。始め車に乗っていたが途中で車を降り、丸太が積み上げている所を危なげに超え、HTさんの庭に入る。木が鬱蒼とし雑草がボウボウ生えている庭に、白い洗濯物が干してある。「HTさん、遊〜そぼッ!」僕は大声を上げる。HTさんはノコノコ庭に出てくる。「ゴルフに行こうよッ」と僕、「女房は今風呂に入っているんだ」とHTさん。庭は緑が濃く空は青い。タダそれだけの夢だ。(そして僕と女房はゴルフはやらない)

HTさんは元ANAの技術者。その後早期退職して子会社に行った筈だ。でももうリタイアしている歳か?奥さんは北海道出身、どちらもノンビリしていて口数は少ない。僕らは横浜の並木団地の仲間だった。近くにシーパラダイス?が有る。僕らは団地の中でテニス仲間が集まって仲良くしていた。テニスだけではなく、年末5〜8家族が集まって持ち回りで自宅で忘年会もやっていた。皆同じ団地のマンションなので広さも3LDK、4LDKと同じようなものだった。その頃は皆若く子供達もまだ小学生だった。(今は僕の下の娘でさえ32歳、随分時が経ったものだ…)

その内僕は仕事のテニスイベントが忙しく社に泊り込みの状態が続いた。糖尿病も出てきた。女房は心配し都内に部屋を借り引越した。始めは八雲、高級住宅街だった。部屋も一戸建ての半分で、残りの半分は大家さんが住んでいた。シヤレた洋風建築で住みやすかった。でも家賃が32万と高く、そのうち田園調布に庭付きの借家を見つけ引っ越した。家賃は23万だった。しかしその内僕の会社が潰れ、僕らは池上の狭いマンションに引っ越した。並木のマンションは取られてしまった。その後並木の仲間とは会っていない。でも時々彼等の夢は見る。年賀状のやり取りはしているが、僕の方は変わり者なのでソッケなく、相手が「また会いたいですネ」と書いてきてもダンマリを決め込んでいる。でも僕が少し立ち直り余裕ができれば、また忘年会をやってもいいかなと思っている。でもいつの間にかジジイになり、その機会はますます遠のくようだ…。  (2010年2月10日)