名目プロデューサー (PD-167)

僕は有明コロシアムの最上階にいる。あるいはビルの最上階か、小樽にある住吉神社の最上部か?そこで僕は元フィクサーの?TUに声をかけられる。このテニスイベントの名目プロデューサーをやらされるらしい。僕は彼に紺のダブルのブレザーと、その上に羽織る赤茶のバックスキンのレザースーツあるいは西洋羽織を?着せられる。(この薄いレザースーツは一体何だ?)そして有明の、あるいは住吉神社の1階にエレベーターで降りる。つまりそこから有明のVIP席に行くために。僕は多分VIP席の最前列の中央あたりに座るんだろう。この席にはテニス協会の大物や冠スポンサーのVIPや、場合によっては皇族も座る。

相変わらずTUの丁稚のSDが、自分の後輩を引き連れて僕の動向を窺う。SDは不実で出入り禁止にした男だ。でも彼は常に僕の動向を窺っている。何とか僕になりたい男。僕の仕事仲間がそう言っていた。つまり常に僕に嫉妬する男だ。でもTUはもう90数歳、もう20年も前にマスコミに叩かれDM社を去った男だった。その後も彼は闇将軍のような振る舞いをしている。多分まだ生きている人だ。あるいは今朝死んで僕に挨拶に来たのか?でも僕は挨拶されるほど大物ではない。僕は10数年前自分のやっているイベントで彼に脅されてから、彼との付き合いは絶っている。僕はビジネスマンで、ヤクザではないからだ。

彼は多分このイベントの名誉会長か何かだろう。でも実際はそんな事は有り得ない。何しろ社会から追放された人だ。でも良く解釈すれば、彼の心の中で逆らった僕を許したのかもしれない。一時は彼は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、やはりやり方に無理があった。友人の大企業のトップたちに融資させた自分の会社を乱脈経営で潰し、君臨していたDA社の会長職も解雇された。彼は古いタイプの経営者、あるいはヤクザの親分のようなもので、彼を頼ってくる人たちに金をばら撒いた。でもそれは必ずしも悪いことではない。社会的・公共的事業にも理解を示した。その為に多くの金が要り、無理をせざるを得なかった。僕もDA社にいる時は随分彼の世話になった。僕がやったイベントの多くは、彼がスポンサーを紹介してくれたものだ。だから伝説的な経営者にも何度か会った。そごうの水島会長とか、クロネコやまとの小倉社長とか…。


彼の顔の広さはすごいもので、大企業のトップから、マスコミのトップ、ヤクザの親分、皇室までに及んだ。だから少し交友範囲が広すぎたのかもしれない。彼は注意深くそれらの付き合いを大事につないでいた。それが彼の力の源泉でもあった。例の某球団を持っている大新聞のあの高慢な老人も、昔から彼の仲間だった。でも彼の僕に対しての脅しは軽率だった。僕は職人だからへそ曲がりで、脅すのは逆効果だった。彼はなぜ僕が駆けつけてこないのか不審がった。でも世の中には僕のような頑固者も沢山いるんだ。でも彼が老衰の中で、あるいは死の床で僕の事を少しでも評価してくれたのなら、それはうれしい事だ。僕もそういう意味ではもう老人だ。そしてこれは只の夢だ。でも近頃昔世話になったお年寄りの夢を見ると少しドキッとする。ヒョットすると死んだのではないかと…。