灰色の高層マンション (PD-33)

通路側の壁で下は見えない。でも明らかに高層マンションの狭い通路だ。建物はコンクリートの打ちっ放しで?通路は狭くそこに戸別のドアが続いている。高い壁で下は見えないが明らかにそこは高層階で、高所恐怖症の僕の足はすくんでいる。

その狭い通路にYM氏がいる。元AK不動産の会長で、大企業AK社のエリート路線に乗れなかった人である。僕との付き合いは30年位前からで、色々な仕事を貰ったが小さな仕事ばかりであった。その後彼が始めた健康食品の販売を手伝った。しかし所詮は零細メーカー(おじさんとおばさんの2ちゃんメーカー)のチャチさで、全然マーケティングをやらなかった。YMさんが会長をリタイアした後は彼にその仕事を戻したが、彼は一年で撤退してしまった。僕がやっていた時は月数十万は売れていて、僕の顧客リストまで付けて戻したのに…。

物を売るという事は本当に難しい。この零細メーカーも今や大手に駆逐され撤退寸前である。商品はハワイ産ノニで製品的には優位性があった。しかしそのおじさん・おばさんは他人のフンドシで相撲を取るスタイルで、とうとう市場で少しのプロモーションもやらず、今やその市場から追い出されようとしている。商売・販売というのは本当に難しいもので、自己都合・自己利益だけでは決して上手くいかない。この厳しい状況の中で、今伸びている企業は徹底したユーザー・オリエンテッド企業だけである。(たとえ零細メーカーでも商品が良く適切な市場活動をすれば、大きくなる可能性は充分にある…)

YM氏はまた何かを売りたいらしい。自宅のドアから出てきて透明な水の入ったボトルを持っている。それを僕に飲んでみろという。自宅には入れてくれない。彼は遅くに結婚して、奥さんはまだ若く二人の小さな子供がいる。奥さんは大手商社の社長秘書だった人で、多分優秀な人だ。僕はその水を飲んでみたが少し生臭い。彼は通路の壁を越えて屋根部分に上がり(何と恐ろしい、足がすくむ)そこの水道からボトルに水を入れている。水の中には黄緑色の繊維が入っている。何とゴルフボールを削ったものらしい。(夢だから荒唐無稽だ…)

多分ミネラルウォーターの一種なのだろうが、ゴルフボールを削ったものが入っている水なんか飲みたくない。AK社は水処理でも大手のプラントメーカーである。しかし気になるのはその高層マンションがコンクリートの打ちっ放しで、全て灰色である。何となく異常な景色だ。まさかYMさんに何かあったのでは?彼は昨年秋甲状腺癌?で手術をしていた筈だ。手術は成功したようだが癌の場合は転移もあるので要注意だ。多少心配だが電話するのもやや気が重い。近頃は本当に消極的になっている。それとも年相応か?  (2010年1月29日)