「怖〜い誘惑」考 (ND-8)

2日前に見た「怖〜い誘惑」の夢で、昨日新宿を歩いていた時ハッと思い当たった。あれは本当は危険な夢だったのだ。単に得体の知れない若い女の子とエッチをし損なったというだけの夢ではない。あのボロ屋の異様さ、枯れ枝や枯れ草で作ったようなボロ屋。あの異様に大きな横に長い竈、人が充分横たわれる大きさだ。その上に載っている大きな金ダライあるいは大鍋。そしてセルフサービスで自分の体を綺麗にする。その先はこんがりバーベキューかぐつぐつシチューか?

あの娘の黒っぽい目立たない不思議なファッション。それと爺さん、婆さんも、帰ってきたハゲ親父も、何とも得体の知れない人間離れした連中だった。本当は狐狸妖怪の類だったのか?つまり僕は「注文の多い料理店」に入ってしまったのかもしれない。しかも色仕掛けで。ああ危なかった。たとえ夢とはいえ焼肉にならなくて良かった。年寄りの肉は固くて不味いぞ〜ッ!僕のスケベ心が危険を招いてしまった。日頃を振り返り反省反省。(別に何も悪い事はしていないが、心情的にはエッチ心は健在だ)

井上靖の古代中国の小説で、狼に食われた武将の話があった。漢の頃か?塞外に蛮族を追討に出た部隊が帰還する時に、民家に泊まった将校がその家の寡婦と通じてしまう。寡婦は何故か大仰に嘆く「お前も私ももうお終いだっ!」と。将校が訳を質すと、この村の古い言い伝えに異族と交わると二人とも狼に変身してしまうという。そして彼らはツガイの狼に変身した。そして月夜の荒野で交わっていると、やはり帰還途中の自分の親友に見られてしまう。

狼は夫婦の交わりを見られてはいけない。見たものは必ず殺さなければならない。狼の将校は束の間人間の心を取り戻し、親友に「早く逃げろッ!」と叫ぶが、やはりその内狼の本性を現しその親友を食い殺してしまうという怪奇譚だ。井上靖は多分中国古代の伝承からその小説を書き起こしたのだろう。中国の歴史にも西域の歴史にも無数の怪奇な伝承が残されている。井上は天山のハザマにひっそりと佇むイシククル湖の伝承についての小説も書いている。この世界は怪奇・不思議に満ちている…。


僕の場合は夢とはいえ、危険に満ちていた。人生本当に何が起こるか分からない。せめて得体の知れない若い女の子には気をつけよう。でも「部屋に寄っていかない?」と誘われたら、果たしてそれを振り切れるかどうか?今日は夕方歯医者だ。せいぜい歯をガリガリやられて少しは反省しよう…。  (2010年9月17日)