あの時の高揚感 (PD-159)

僕はコピーライターのTRとエネルギー関係の大手との打合せを終えて田舎から戻リつつ有る。大きな幹線道路を東京に戻ってくる。どこか北のほうの支社だった。そこで僕はテレビについての情報を得た。僕は会社の“お父さん社長KM”にすぐに動いてもらおうと思った。KMはその会社の本社広報部門を知っている。先んずれば制す。しかしその前に某テレビ局に駆けつけ、馴染みの営業DBに声を掛けようとする。しかしそのTV局は弱小なのでセコイ事しか考えていなかった。僕の話はもっと大きな話だ。しかしDBは席をはずしていた。僕はあせった。その部署は人で込み合っていた。TRもこの情報を小さいものと考えていた。そうじゃない。これはかなり扱い額の大きな情報だ。僕は彼らのイメージの貧困さに腹を立てる。

KMは仕事で僕と組んでいた大正生まれの伝説の?老社長で現役の営業だった。その割りにリアルでセコかったが、それが逆に愛嬌にもなった。彼は僕の依頼を良く聞いてくれ、必要な行動をすぐ取ってくれた。僕は「お父さん、お父さん」といって彼を引っ張りまわした。でも久しぶりの仕事が取れそうな予感と高揚感。僕にとっては大きな仕事を決めるまでが、スリルがあって充実感があった。僕は30代後半の頃、次々と新たな仕事を開拓し幸運の中にいた。初めは数十万だった売上が、数ヵ月後には数百万、そのうち数千万になり、一年を過ぎると億に達する。そんな営業を、勿論自分で企画も書いたが、何度も繰り返した。その内営業本部長になってしまった。「シマッタ!」本当は人の上に立つような柄じゃあない。単なる企画・営業職人なんだ。でももう遅かった。そのうち社内の権力争いに巻き込まれ見事撃沈された。柄じゃあない事はするべきではなかった。

僕はKMに会う前に目が覚めた。時計を見ると朝の6時だった。久しぶりの仕事を取れる時の高揚感。もう数十年も忘れていた感覚だ。でもヤバイッ!こんな夢を見るようじゃあもう先は長くないか?それより“お父さんKM”が出て来たのはチョット気になる。しかも会えなかった。彼は実際はもう90数歳だ。まさかあの世の旅立ちの別れに来たんじゃないだろうネ?怖い怖い…。懐かしい人が行ってしまうのは何とも寂しいもんだ。今朝の夢が何とか正夢ではないように…。“お父さんKM”は業界でも名物男だった。(チョット大袈裟か?)例えばイベントでキリンとアサヒを一緒に付ける非常識を平然とやった。でもそこはお父さんの愛嬌で何とか潜り抜け、おまけにその後キリンから大きな仕事を取った。中々普通ではない笑える人だった。

クーデター男のMZも死んだ日の朝僕の所に挨拶に来た。しかも僕と麻雀を打ち彼の性格通りセコく、1000点で泣き逃げした。今朝は懐かしいKMの顔は見れなかった。どうか90数歳とはいえもっと長生きしてヨ。皆が寂しがるから…。  (2011年2月26日)


※この頃僕も本当に何だかおかしい。数日前も夜寝ていると突然若い?女の声が聞こえた。それも2度も!それは僕の頭の中から聞こえた。まさか頭の中に誰か住み着いているんじゃあないだろうネ?怖い怖い…。