状況構造の理解 (PD-190)

昨日の夢はたいした事のない夢だった。またMTDの繰り返し。今度は僕はDA社のオフィスにいる。ついたての向こうで人の気配がする。僕を殴って首になったコピーライターのNMが、デザイナーのSIに声をかけている。また釣りの話かも知れない。今から数十年前、その頃ルアー・フィッシングが流行り始め、DA社の釣りクラブもルアーが流行っていた。この二人とも例のNGグループである。NMの姿は見えないけれど明らかに彼がいる事が分かる。

次の場面は僕は自分のデスクにおり、隣は何と天敵のHYである。彼もやはりNG系である。僕はタバコを切らしており、HYの机には僕の吸っているのと同じタバコが山のように積んである。でもそれを貰う訳にもいかない。僕はやむを得ずタバコを買いに外に出る。何時ものDMビルを出て交差点の向こうにあるタバコ屋を目指す。僕はお金がなくてタバコを2箱買うのがやっとである…。ただ単にそれだけの夢だ。でも何故かそこで僕は大きな事に思い至る。ア〜ァそうだったのか。僕がDA社にいた20年間、色々な事があったが、実はただ一つの構造?だったのかと。でも多分これは間違いないだろう。僕は鈍い人間だが、時々ハッと気付く事がある。

僕の天敵NGの事は以前に書いた。僕は彼の悪事を止め(裏金取り)彼に恨まれたと。それとクーデター男MZの事も。全ては別々に起こったように見えるが、実は根は、構造は一つだったんだと。だから鈍い僕はDA社を辞めて10数年後に、やっとこの事に気付いた事になる。これでは蛍光灯というより何というべきか言葉も見つからない。この気付きが果たしていい事か悪い事か?今さら気付いてもどうしようもない。僕は本当に鈍い人間だ…。

僕がDA社に途中入社して以来、DA社は常に係争の中にいた。僕が入社してすぐに、その頃の経営陣が追放された。組合の執行部だったNGが、たいした理由もなしに経営陣を追放したのである。組合を扇動して騒ぎたて。だから全てはここから始まった。全ての負の事象が…。その頃の経営陣は優秀だったと思う。社長は女性で、何と加藤隼戦闘隊長の奥さんで上品な人だった。僕も入社早々優しい声をかけて貰った。多分その頃親会社のDM社には、鳴り物入り経済同友会の事務局から転進してきたTUが入ってきた。そして子会社のDA社の社長も兼任する事になった。その事が多分この時のクーデターの背景にあったんだろう。つまりTUは自分にとって不都合な人間はドンドン追放していった。その後も次々と。しかも自分の手を汚さずに。NGは多分彼の手先を勤めていたんだろう…。

そして彼には彼のDA社に対するある種の構想があった。その頃取締役に昇格したYTと組んで、DA社を牛耳ろうとしたのだろう。彼らは裏金を使い新しいクライアントを獲得した。新しいクライアントを獲得できるのは彼らだけだった。でも僕が入ってきた。僕は裏金も使わず新しい大型クライアントを次々と獲得した。しつこい営業とプレゼンの山で。僕は親会社から回されてきた副社長のKMと組んだ。彼は広告論もマーケティングも知らない接待営業だったが、シンプルで単直な僕にはピッタリの上司だった。しかし彼には慢性的に続くDA社の赤字を解消させるほどの力量はなかった。だからYTとNGには彼が邪魔だった。その後NGは悪事でDA社を追われたが、会長のTUが彼を引き取った。TUが広い顔を利用してお金を集め、自分の会社を作ったのである。でも具体的な事業は立ち上がらなかった…。

一方残されたYTはとうとうクーデターを仕掛けた。KMを追放し自分が社長になろうとしTUの所に頼みに行った。でもTUはこれを断る。で結局YTはDA社を止める事になった。彼はそれ以前に営業部を抱き込み、営業全員が彼を支持するよう工作した。ある時期営業全員が箱根の温泉に集まり、YTを社長にしようと気勢をあげた。呼ばれなかったのは僕一人である。僕はそんな集まりさえある事を知らなかった。しかし狡猾な?TUは自分の思い通りに動く単純なKMが重要な存在だった。だから結果的に社長のKMも僕も生き残る。彼らはDA社を去った…。

しかし話はそれだけではない。その後僕の部下でNGとの繋がりが深かったMZがクーデターを起こし、KMと僕を追放する。彼は多分NGと組んでいた時、NGのやり方を十分見ていたのだろう。ダーティな仕事の取り方や裏金の取り方を。彼は組合を扇動して強引にクーデターを起こした。それは何とか成功した。しかしその後大親分のTUが没落する。自分の起こした会社が破産したのである。資本金で集めた20億円の金は何処かに消えた。彼はマスコミに叩かれ、DM社の会長も辞めざるを得なかった。このTUの会社を実質的に経営していたNGも職を失った。でも彼は豪邸を建てたとの噂が流れた。そして残ったMZも数年で没落する。おまけに肺癌ですぐ死んでしまう。まさに諸行無常、彼の滅びは早かった…。

それで昨日の夢で僕は何に気付いたのか?NGグループの相変わらずの僕に対する反感に対し。でも分かったのである。これらのつまらない壮大な混乱はたった一つの流れだと。もし僕がいなかったら、YTとNGは彼らの帝国を築いていただろう。狭い正義感に凝り固まった僕がいなければ。そして優秀な広告代理店として発展したかもしれない。それを僕が全てをぶち壊した。ダーティなビジネスはいけない、裏金を取るのはいけないと。でも他の大手広告代理店もやり方はダーティだし、平然と裏金も使う。それが広告ビジネスの今までのありようだった。だから僕は狭い正義感でDA社の発展を妨げたのかもしれない。それが昨日の夢で突然分かった。僕がいつまでもNGや彼のグループに恨まれる訳が…。


NGの夢は彼と会った早々に一回だけ見ている。彼は人間ではなかった。昔パゾリーニの「アポロンの地獄」という映画がきたが、そこに出てくるスフィンクスそっくりだった。変な仮面をかぶり、変な動きをする異形のものだ。ヒョットすると彼は宇宙人かもしれない。確かに頭は凄く良かったが、人間としては化け物だった。普通の人間が持つ道徳感覚や社会感覚が全くなかった。人の世は本当に広いもんだ。それぞれの人の価値観の大きな違い…。でも今夢で、今さら状況構造が分かった所で、僕にはどうする事も出来ない。多分僕はピエロ的な存在だったんだろう。僕に与えられた変な役割をまじめに演ずる…。