兄弟仁義(PD-266)

近頃は自分の老化と生活の無目的のため僕はだんだん呆けてきた。物忘れが激しいし体も動かなくなってきた。どうやら僕は棺桶に片足を踏み込んでいるようだ。数日前も突然右足が動かなくなり、僕はやむを得ずハイハイして歩いていた。幸いこの惨状からは一日で回復したが、何と情けない状況か?だから本当は毎日のように動き回り、簡単でもいいから何か仕事がある方がいいんだろう。

だから僕の夢もこの頃は荒唐無稽のものが多く、書くに堪えないような夢を見る。それも断片的に。今朝は比較的ハッキリした夢を見たのでチョット書いてみる。出演者は4人、僕と仕事仲間のMT、次兄とその旧友KNさんの4人である。僕らは同じ部屋で別々に酒を飲んでいる。畳の上で胡坐をかいて、それもすぐに隣り合わせて。酒は日本酒の冷や酒。僕の組は何だかビロンとした広い何かの?干物を食べている。多分MTの田舎の産物だろう。彼は千葉県出身である。

次兄組も何かつまみを食べながら雑談している。その内次兄が僕に何か言ってくる。と言うか何かを僕に伝えようとしている。僕の相手のMTの事か?彼は元朝広の営業マンで、お互いにゲリラ的な営業だったので何となく親しくなった。それと彼は早稲田の出身者らしく、言動にやや粗暴な所が?ある。だから何だかうれしくなる奴だ。兄の相手のKNさんも高校時代からの親友で、彼も一癖ある文学青年だった。彼は高校時代ある時睡眠薬自殺を図り、生死の境を彷徨っている時に、自分の魂を飛ばし次兄と僕の所に現れた。

僕は今でもその時の事を鮮明に覚えている。ある夏の明け方4時位、部屋の外はソロソロ薄明になりつつあった。その時突然僕の部屋の前の廊下がギシッ、ギシッと音を立てる。誰かが来たッ!僕は恐怖におののいた。その足音は僕の部屋の前でピタリと止まり、障子がスルスルと開けられる。そしてその誰かが僕の布団の上にのしかかる。僕はすでに全身金縛り状態。でも僕は渾身の力を振り絞り、ヤッ!と声を上げて掛け布団を蹴飛ばした。でもそこには誰もいなかった。だから僕は誰かが死んで魂を飛ばして僕の所に来たんだろうと思った。朝起きると次兄の所にも来たという。

でも2日後それが誰だか分かった。次兄の親友KNさんが睡眠薬自殺を図り、生死を彷徨う内次兄と僕の所に来たと本人が言った。2日後彼が高校に出て来た時、彼自身が次兄にそう告げた。次兄はともかくその弟の僕の所まで来るとは、僕にとってはいささか迷惑であった。KNさんとはそういうチョット変わった人である。でも今朝の夢は一体何だろう?ヒョットすると次兄はMTの死を告げたのだろうか?それとKNさんももうむなしくなっているのだろうか?突然奇妙な組み合わせの夢を見せられたので、何だかチョット引っ掛かる。


お互いに、この4人に何も無ければ良いが?もうソロソロ4人ともいつ死んでもおかしくはない歳だ。人の命など本当にはかないもんだ。ガンや心臓発作や交通事故など、誰にでもいつでも簡単に起こりうる。近頃僕は自分自身の衰退、老化でその感を強くしている。ヤレヤレそれにしても次兄は元気だろうか?近頃次兄は僕を怖がって?めったに電話もしてこない。そうかといってパソコン、メールもやっていない。僕の歳では意外とパソコン利用者は少ないようだ。こんな便利なものなのに…。