山賊の親分(PD-267)

今日の夢は珍しい男が出て来た。60台で一時務めた事務所のワンマン社長である。彼はバブル期に自分の不動産会社を大きく成長させたが、その後総量規制にやられ破産状態になった。しかし彼は会社を解散させず、その後は家族中心で事業を継続させた。自分は社長、奥さんは経理部長、娘は制作部長、息子二人は営業である。元の会社はライベックスとか言い新宿三井ビルにあった。あの高層ビルのハシリのビルである。

僕ら7人は募集に応じ採用されたが、ほとんど仕事はなく変な会社だと思ったが、その後その理由が分かった。その時は高齢者再雇用政策がとられ、高齢者を再雇用すると国から補助金が貰えたらしい。だから仕事もないのに大量雇用して一時的な補助金を調達した。それが再雇用の理由だったらしい。しかし僕は仕事ができたので忙しく、最後にはとうとう疲労で顔を腫らし辞めざるを得なかった。やはり60台での激務は無理だったようだ。でも他の6人は順次首になった。補助金を貰えばもう彼らには用無しである。

その社長が突然夢に出てきて僕を呼び出した。そして彼は僕に仕事上の協力を求める。僕は彼の怪しさで、内心用心しなければと思ったところで目を覚ます。その男は千葉と言った。彼は僕がその会社に勤めた時にも夢に出てきて、昔の、多分江戸時代の恰好で、小さな山の上の茅葺の小屋にいた山賊の首領であった。彼はヒゲぼうぼうで汚い着物を身に着け、その上に何かの毛皮を羽織っていた。おかしかったのは制作部長の娘も女山賊の姿で出て来た。彼女は短い着物を着、太もももあらわに腰にはでかい刀を差していた。何の事はない彼らは山賊一家だった。


つまり僕は夢の中で彼らの素性を知らされた。でもたとえ山賊でも、家族が力を合わせて厳しい世間を乗り切っていくのは素晴らしい事だ。所詮人間はもとをただせば一人の野人に過ぎない。いつも組織や社会に守られている訳ではないし、家族が力を合わせるのも大昔からのもっとも原始的な利害集団である。でも何で突然山賊一家の夢を見るのか?僕はちっとも懐かしくなかった…。