モンスター・ヘッド(PD-270)

不可解・不条理かつ異形・異界の夢を毎日のように見続ける僕の頭はまるでモンスター。つまりモンスター・ヘッドだ。頭の中に異界、魔境が存在する。それは物理原則をも無視した世界だ。今日も異形の夢を見る。初めは灰色の空間に、35ミリフィルムのパッケージが縦にピッタリ密着して、10数本並んで浮かんでいる。しかもそのパッケージは灰色で古錆びている。中にはどんな映像が潜んでいるのだろう?

と思うとたちまちそのフィルムの映像が現れる。それはビルなどが立ち並ぶ、古いこげ茶色の街並みだ。街並みは黒ずんでいる。それが灰色の空間にこつ然と立ち並ぶ。とその内空に大きな立方体がさかさまに現れる。立方体の上部は映像が断ち切れている。窓はないのでそれはビルではないようだ。それが5〜6本現れ、ゆっくり左から右へ移動していく。縦長の立方体の角度は様々だ。でもどうして落ちて来ないんだろう?そして灰色の空と同じ色をした霧がその立方体の前をゆっくり流れている。只それだけの夢だ…。


灰色とこげ茶色の世界。それは陰鬱で寂寥とした異形の風景だ。こんなものが頭のどこから出てくるんだろう?どうせ見るならもっと明るい青空や街並みを見たい。地中海ブルーの海も見たい。ディズニーランドのような童話的な世界が見たい。こんな異形の光景、風景しか映し出せない僕の頭の中は、想像力が乏しくて暗くて貧弱に違いない。そういえば僕は地中海にも行ったことはないしスイスにも行ったことはない。アメリカはニューヨークやシスコには仕事で行ったがハワイは行ったことがない。でも夢は多分もっと心に、精神に係わる映像なのだろう。そうであればこの陰鬱な映像もやむを得ない事なのか…?

入稿業務(PD-269)

僕は入稿原稿を持ち埼玉県へ向かう。原稿はB4位でかなり大きい。媒体は大型グラビア雑誌かヒョットするとタブロイド判かもしれない。僕は田舎の駅へ降り立ち、線路をまたぎ茶色の田舎道を歩きつつメディア、つまり媒体社を探す。でも指示された番地には不可思議な建物群が建っている。つまりアリ塚のような黄土色の土くれでできているボコボコの建物群だ。大抵は1〜2階だが、中には5〜6階や10階近い建物もある。いつ倒れるか分からないような土くれの建物だ。

指定された住所は10−11なので僕は10が表示された街区に立つ。でもどれが媒体社か分からない。何しろアリ塚のような薄茶色の建物が続くだけだ。通りかかった女性に聞いてみるが分からないと言う。ここは何だか不思議、不可解な街だ。僕は思い余ってわが社のおとうさん社長に電話する。でも社長も行ったことのない場所で、彼はわが社の媒体部長を電話口に連れてくる。でもこの部長は昼間からベロベロに酔っている。そして彼も当然分からない。僕は困惑した。そこで目を覚ます…。


でも近頃夢の中で頻繁に出てくるこの黄土色は一体何だろう?建物も街も景色も黄土色に包まれている。確か昨日は破壊された黄土色の街やビル、今朝はアリ塚のような黄土色の町…これは一体何だろう?それまでは夢の中に黄土色は出て来なかった。もしやこれは僕のアナザーワールドだろうか?来世だろうか?それとも腎臓疾患、人工透析の影響か?いずれにしてもこれはあまりいい兆候ではなさそうだ…。

ペンシルビル(SD-71)

僕はお堀端の道?を歩いていた。しかしある集団が進んでくるため、それを避けて物陰に隠れた。見つかれば撲殺される恐ろしい連中だ。今の世界は特定の主張をする?集団と、それに賛同しない少数派に分かれて、街は殺伐としていた。彼らの主張とは一体何だろう?

僕はペンシルビルの最上階にいる。多分8階か9階だろう。ビルは焼け焦げてボロボロである。というより町全体が見事なスクラップである。僕はその最上階で敵を一人見つけ撲殺する。夢の中とはいえまた人を殺してしまった。最上階にはもう一人人間がいた。でもそれは敵ではなさそうだ。僕らは隣のビル、やはりボロボロのビルに飛び移り、そこにある人が入れるような細長いダンボールに入って寝むろうとする。敵に襲われないよう手頃な鉄パイプを持って。


ここはどんな世界だろう?一見日本の銀座のように見える。でも街はボロボロになって薄茶色に染まっている。ここは街全体が破壊され、ビル群もほとんど骨格だけになっている。僕のいるビルも薄茶色に染まり、屋上もコンクリートの破片が散乱している。ヒョツトすると隣国から核攻撃を受けたのだろうか?そしてこれはいつの時代なのか?遠い将来の日本の姿なのか、それとも近未来か?それにしても殺伐とした嫌な世界だ。夢の中で何故こんな風景を見せられるのだろう?とにかく僕はサバイバルだ。何とか生き延びなければ…。

桜の酒(PD-268)

桜が満開だった。僕と女房は桜の近くに寄る。すると手の届きそうな黒い枝の先から酒がほとばしっている。水道の蛇口より大きな滝?あるいは流れが出来ている。僕は手に持った細長いワイングラス?でそれを汲んでみる。そして飲んでみる。確かにそれは酒であった。でもアルコール度は低い。そしてほんのりと甘い。

僕らはその園を歩き池の傍まで行く。ここはどうも小樽の住吉神社のようだ。でも全体が平たい庭園になっている。その庭園は花で埋められている。でもそれは地にあるのではなく樹上にあった。多分桜だけではなく、桃も梅も杏も一斉に花開いているのだろう。僕らはそこを楽しげに歩いている。

人間は死にかけると美しい花園に行くという。でもここは花園ではなく花木?の森である。僕らは美しい花を頭上に見ながら歩いている。この夢がいい夢か悪い夢か?昔中国に「葡萄の酒 夜光の杯」という歌があった。でもこちらは「桜の酒 ワイングラス」だ。この細長いワイングラスはまさかチェリーグラスと言うんではないだろうな?

山賊の親分(PD-267)

今日の夢は珍しい男が出て来た。60台で一時務めた事務所のワンマン社長である。彼はバブル期に自分の不動産会社を大きく成長させたが、その後総量規制にやられ破産状態になった。しかし彼は会社を解散させず、その後は家族中心で事業を継続させた。自分は社長、奥さんは経理部長、娘は制作部長、息子二人は営業である。元の会社はライベックスとか言い新宿三井ビルにあった。あの高層ビルのハシリのビルである。

僕ら7人は募集に応じ採用されたが、ほとんど仕事はなく変な会社だと思ったが、その後その理由が分かった。その時は高齢者再雇用政策がとられ、高齢者を再雇用すると国から補助金が貰えたらしい。だから仕事もないのに大量雇用して一時的な補助金を調達した。それが再雇用の理由だったらしい。しかし僕は仕事ができたので忙しく、最後にはとうとう疲労で顔を腫らし辞めざるを得なかった。やはり60台での激務は無理だったようだ。でも他の6人は順次首になった。補助金を貰えばもう彼らには用無しである。

その社長が突然夢に出てきて僕を呼び出した。そして彼は僕に仕事上の協力を求める。僕は彼の怪しさで、内心用心しなければと思ったところで目を覚ます。その男は千葉と言った。彼は僕がその会社に勤めた時にも夢に出てきて、昔の、多分江戸時代の恰好で、小さな山の上の茅葺の小屋にいた山賊の首領であった。彼はヒゲぼうぼうで汚い着物を身に着け、その上に何かの毛皮を羽織っていた。おかしかったのは制作部長の娘も女山賊の姿で出て来た。彼女は短い着物を着、太もももあらわに腰にはでかい刀を差していた。何の事はない彼らは山賊一家だった。


つまり僕は夢の中で彼らの素性を知らされた。でもたとえ山賊でも、家族が力を合わせて厳しい世間を乗り切っていくのは素晴らしい事だ。所詮人間はもとをただせば一人の野人に過ぎない。いつも組織や社会に守られている訳ではないし、家族が力を合わせるのも大昔からのもっとも原始的な利害集団である。でも何で突然山賊一家の夢を見るのか?僕はちっとも懐かしくなかった…。

兄弟仁義(PD-266)

近頃は自分の老化と生活の無目的のため僕はだんだん呆けてきた。物忘れが激しいし体も動かなくなってきた。どうやら僕は棺桶に片足を踏み込んでいるようだ。数日前も突然右足が動かなくなり、僕はやむを得ずハイハイして歩いていた。幸いこの惨状からは一日で回復したが、何と情けない状況か?だから本当は毎日のように動き回り、簡単でもいいから何か仕事がある方がいいんだろう。

だから僕の夢もこの頃は荒唐無稽のものが多く、書くに堪えないような夢を見る。それも断片的に。今朝は比較的ハッキリした夢を見たのでチョット書いてみる。出演者は4人、僕と仕事仲間のMT、次兄とその旧友KNさんの4人である。僕らは同じ部屋で別々に酒を飲んでいる。畳の上で胡坐をかいて、それもすぐに隣り合わせて。酒は日本酒の冷や酒。僕の組は何だかビロンとした広い何かの?干物を食べている。多分MTの田舎の産物だろう。彼は千葉県出身である。

次兄組も何かつまみを食べながら雑談している。その内次兄が僕に何か言ってくる。と言うか何かを僕に伝えようとしている。僕の相手のMTの事か?彼は元朝広の営業マンで、お互いにゲリラ的な営業だったので何となく親しくなった。それと彼は早稲田の出身者らしく、言動にやや粗暴な所が?ある。だから何だかうれしくなる奴だ。兄の相手のKNさんも高校時代からの親友で、彼も一癖ある文学青年だった。彼は高校時代ある時睡眠薬自殺を図り、生死の境を彷徨っている時に、自分の魂を飛ばし次兄と僕の所に現れた。

僕は今でもその時の事を鮮明に覚えている。ある夏の明け方4時位、部屋の外はソロソロ薄明になりつつあった。その時突然僕の部屋の前の廊下がギシッ、ギシッと音を立てる。誰かが来たッ!僕は恐怖におののいた。その足音は僕の部屋の前でピタリと止まり、障子がスルスルと開けられる。そしてその誰かが僕の布団の上にのしかかる。僕はすでに全身金縛り状態。でも僕は渾身の力を振り絞り、ヤッ!と声を上げて掛け布団を蹴飛ばした。でもそこには誰もいなかった。だから僕は誰かが死んで魂を飛ばして僕の所に来たんだろうと思った。朝起きると次兄の所にも来たという。

でも2日後それが誰だか分かった。次兄の親友KNさんが睡眠薬自殺を図り、生死を彷徨う内次兄と僕の所に来たと本人が言った。2日後彼が高校に出て来た時、彼自身が次兄にそう告げた。次兄はともかくその弟の僕の所まで来るとは、僕にとってはいささか迷惑であった。KNさんとはそういうチョット変わった人である。でも今朝の夢は一体何だろう?ヒョットすると次兄はMTの死を告げたのだろうか?それとKNさんももうむなしくなっているのだろうか?突然奇妙な組み合わせの夢を見せられたので、何だかチョット引っ掛かる。


お互いに、この4人に何も無ければ良いが?もうソロソロ4人ともいつ死んでもおかしくはない歳だ。人の命など本当にはかないもんだ。ガンや心臓発作や交通事故など、誰にでもいつでも簡単に起こりうる。近頃僕は自分自身の衰退、老化でその感を強くしている。ヤレヤレそれにしても次兄は元気だろうか?近頃次兄は僕を怖がって?めったに電話もしてこない。そうかといってパソコン、メールもやっていない。僕の歳では意外とパソコン利用者は少ないようだ。こんな便利なものなのに…。

レイコンダンの刷新(PD-265)

昨日の夜眠ろうとして物凄い疲れを感じた。そして自分の生命体としての寿命がもう残り少ない事をフト感じた。本当に疲れてくると逆に眠れないものだ。僕は薄い水割りを造り、それをチビチビ飲み、酒の力で眠ろうとした。

僕は夢の中で、僕の魂というよりは、僕の霊魂団、僕と僕を取り巻く霊魂のグループを若返らせようとしていた。というかある霊魂グループの一員として僕は存在していた。そして女性も年寄りに変わって複数の女子高生に入れ替えた?僕は霊魂団の入れ替えに成功したらしい。僕は夢の中で元気を取り戻す。

でもこれは一体何のこっちゃ?僕は単独の霊魂ではなく、複数の、多分僕に好意を持つ霊魂に取り巻かれた存在だったのか?でもこの夢は現実なのだろうか?突然そんな夢を見せられても、僕は単純に信じることはできない。でも今朝起きても別に僕は若返っていなかった。当たり前の事か…。